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「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

アムステルダムの水上集落「Schoonschip」
アムステルダムの水上集落「Schoonschip」

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、欧州のオランダにも伝わりました。

今回は、オランダのアムステルダムに新登場したサステナブルな水上住宅のお話です。

水上の豪邸集落が誕生

アムステルダムの水上集落「Schoonschip」
アムステルダムの水上集落「Schoonschip」

「オランダ人にとって水上の家ハウスボートは憧れの存在」「けれど、新しい係留場所が増えないので、なかなか住めない」というお話は、以前の記事で紹介していましたね。

そんな中、2019年5月に新たな水上集落が現れ、オランダ国内で話題に。様々なスタートアップ企業がひしめくアムステルダム北部の工業地帯内の運河に、新規で水上居住区がオープンしたのです。46世帯・約100名が住めるその居住区は、「Schoonschip」(クリーンな船)と名付けられています。

沿岸から見た「Schoonschip」
沿岸から見た「Schoonschip」

沿岸からの眺めは、このような感じです。

ウッドデッキで家同士も行き来できる
ウッドデッキで家同士も行き来できる

ハウスボート同士も、ウッドデッキ経由で行き来できるような設計。

地上の家と見間違えそうなヴィラたち
地上の家と見間違えそうなヴィラたち

ハウスボートは通常は平屋ですが、この水上の豪邸たちの大半は2階建て。地下フロアがある家もあるそうです。住人は、この水上集落の家を「ヴィラ」とも呼んでいます。

杭で家の漂流を防止
杭で家の漂流を防止

ちなみにこのヴィラたちは、それぞれが建設会社の倉庫のような場所で組み上げられ、その後にこの場所まで船でけん引されてきています。家の数か所をこのように杭に固定して、漂流を防いでいます。

ヴィラたちが船でけん引され、どのようにこの場所に収められたのか分かる動画があります。とても面白いので、ぜひご覧になってみてください。

Schoonschip Intocht 11 mei 2019

サステナブルな水上の実験集落

屋根のグリーンがのぞく
屋根のグリーンがのぞく

実はこの「Schoonschip」は、環境問題にも真剣に向き合っています。まず、この集落のヴィラは、屋根の3分の1以上を緑化させないといけないというルールがあるんです。そしてヴィラから出る排水は浄化槽で浄化され、水上の庭園や樹木に使用されます。

さらに発電はソーラーパネルによる太陽光発電が主な発電方法になるのですが、なんとその電気を隣近所で融通し合うこともできるのだとか。しかも無料で譲り合うのではなく、ブロックチェーン技術を用いた「Jouliette」という地域仮想通貨を介して行われるのだそう。この仮想通貨を導入しているカフェなどもアムステルダムには存在するので、自宅の発電した電気でビールを楽しむ何ていうことも可能なのです。なんて未来型なんでしょう!

美しい水上集落「Schoonschip」
美しい水上集落「Schoonschip」

驚くのは、この「Schoonschip」は、現在の住人たちがアイデアを出し合って作り上げた集落なのだということ。住人たち自身の手で、11年かけてゼロから理想的な環境を作り上げたのだとか。彼らのこの歴史や仕組みはホームページ経由でかなりオープンにされていますので、そのうち第二、第三のサステナブルな水上集落がオープンするかもしれませんね。そしてオランダだけではなく、世界中に広がるのも夢ではないかもしれません。

[All Photos by Naoko Kurata]

[Schoonschip]

>>>バックナンバーはこちら
【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜

>>>【いくらで建てられる?】夢のデザイナーズハウス

>>>【スローなニュース】オランダのスーパーマーケットの「愛すべき無駄」

倉田直子

Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

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