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倉田直子

POSTED BY ライター/タイニーハウス・ウォッチャー 倉田直子 掲載日: MAR 8TH, 2020.

小さな家の豊かな暮らし【24】女性たちの長屋「Hofje」

「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

中庭を囲む長屋「Hofje」
中庭を囲む長屋「Hofje」

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、欧州のオランダにも伝わりました。

今回は、オランダ古くから伝わる「女性だけで暮らす長屋」のお話です。

中庭がつなぐ、女性のコミュニティ

外からは、中の様子が全く分からないHofje入り口
外からは、中の様子が全く分からないHofje入り口

その長屋は「Hofje」(ホッフェ、またはホフィエ)は、かつてはオランダの各所にありましたが、現代では主に国の北部に存在します。これは、とある「Hofje」の入り口の様子です。人通りや交通量も多い場所ですが、このドアの奥にどんな秘密が存在するのでしょうか。

住人が協力して手入れをする中庭
住人が協力して手入れをする中庭

ドアの内側の細い通路を進むと、ドアの外からは全く想像もできない広々とした中庭が広がっています。その中庭を囲むように、住居が建っているのです。けれどそれは戸建てではなく、まるで日本の昔の長屋のような一続きの構造でできています。

カラフルなHofjeのドア
カラフルなHofjeのドア

実はHofjeは、中世から続くオランダ独特の住居スタイル。当時の富豪などが建物を(当時は生活力のなかった)高齢の未亡人や独身女性に提供したのが元々のはじまりです。

中世では無料で住めたようですが、現代では社会保障が充実してきたこともあり、居住者は(年金などの)収入に応じて家賃を支払っています。そして中には一般の集合住宅と同様、男性やファミリーと共に住める物件もでてきました。けれども、今でも多くのHofjeが「女性の単身者のみ」というスタイルを維持し続けています。

一部のHofjeは、平日の日中は観光客に開放されています(ただし、グループでの見学は要予約)。

可愛らしいホッフェの住宅

Hofje室内のリビングルーム
Hofje室内のリビングルーム
大きな窓があるから室内は明るい
大きな窓があるから室内は明るい

実際にHofjeに入居している方の部屋を見せていただきました。まず玄関を入って右側には、リビングルームが。大きな窓と、白を基調とした壁が部屋を明るく見せています。

Hofjeのキッチンの様子
Hofjeのキッチンの様子
Hofjeのキッチンの様子
Hofjeのキッチンの様子

そして、玄関の左サイドには、キッチンと、ダイニング兼寝室スペースが。キッチンは、現代風の電熱コンロなのもギャップがあって素敵です。

クローゼットのようなベッド
クローゼットのようなベッド
ベッドの扉を閉めた様子
ベッドの扉を閉めた様子

この部屋で一番印象的なのは、ベッド部分。クローゼットのようにドアを閉じられるので、プライバシー確保も万全。それよりも何よりも、童話の中の家具のような可愛らしさで胸がときめきます。

晴れた日にはベンチに座って住人同士でおしゃべりも
晴れた日にはベンチに座って住人同士でおしゃべりも

ホッフェは主に一定年齢以上の女性が住むことが多いですが、決して高齢者向けの介護ホームという訳ではありません。自立した女性同士が、中庭を通してゆるやかにつながりながら暮らしているコミュニティなのです。日本もこれからの高齢化社会に向けて、こうやって住民同士がゆるやかに支え合い、孤独を感じないでいられる住居が人気になってくるかもしれませんね。

[All Photos by Naoko Kurata]
[Hofjes In Haarlem]
[Haarlemse Hofjes]

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【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜

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倉田直子

Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

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