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イエモネ編集部

POSTED BY イエモネ編集部 掲載日: APR 11TH, 2020.

【スローなニュース】何日もかけて作るのに使い捨て!?でも土に還る器。ネパールから

現代社会は、何事にもスピードと効率を求められます。無駄を排除し、必要最小限のコストと努力で速やかに成果を出さなくてはいけません。けれど、無駄にはきっと、種類がありますよね。本当に省いていった方がいい無駄と、省いてしまうと心が痩せ細ってしまう無駄があるとイエモネは考えています。
そんな愛すべき無駄にじっくりゆっくり向き合いたいと考え、イエモネは「スローなニュース」をピックアップしていこうと決めました。
今回は、ネパールの、何日もかけて作る使い捨ての器のお話です。

大自然と神秘の国ネパール

ネパールの首都カトマンズ
(C)shutterstock.com

ネパールは、インドと中国の間にある、大自然と神秘に満ちた国。今回は、首都カトマンズ在住のべ15年のうえのともこさんに、ネパールのスローなニュースを教えてもらいました。うえのさんは、ネパール人の旦那さん、17歳と11歳の息子さんと4人で暮らしています。

スローな工程で手作りされる、ネパールの使い捨ての器

国民的ドリンク、ミルクティー「チヤ」の器

ネパールには「チヤ」という国民的ドリンクを、昔ながらの赤土素焼きのカップで出すお店があります。その器を作る工程がスローなんです。

赤土を掘り出し、練って、成形、乾燥、焼くという工程なので数日はかかります。土の状態や雨季など時節や天候によっても、乾燥にかかる日数は異なると思いますが・・・。

その器は飲み終わったら地面に叩き割り使い捨て。土に還ります。

(うえの)

素焼きの器はヨーグルトの容器としても使われている。ヨーグルトは水分が抜け濃厚に。低温に保たれとてもおいしくなる
(C)Tomoko Ueno

沙羅の葉で作る使い捨て皿

沙羅の葉を寄せ集め小枝で繕った使い捨て皿もあります。市場でおばちゃんが一枚一枚手作りしながら売っていますね。家庭で自作する人も。

葉っぱは、摘みとって、細くした竹ひごのようなもので、一目一目縫い合わせるように形を整えます。葉っぱだと大きさも自由になるので、巨大なものを作ることも可能です。神事などに新品を用意する場合にも使われます。

(うえの)

沙羅の葉の皿。よく見ると縫い目のような線が見える
(C)shutterstock.com

なぜ使い捨ての器を使うの?

市場で手作りしながら皿を売る
(C)Tomoko Ueno

素焼きのカップや葉っぱのお皿を、時間をかけて手作りする、と聞くととても素敵な文化に感じられます。一方で、使い捨て、と聞くともったいない!と思う気持ちも。使い捨ての器を使う理由が何かあるのでしょうか?

大人数のパーティーや屋台で器の数が足りないことや、処分が簡単(洗い物の水も貴重)なこと、穢れや不浄の概念があり、他人との共有を避ける傾向にあることなどが理由だと思われます。

素焼きのカップも沙羅の葉の皿も、時間はかかってもざっくりと作っています。とはいえ、一回の使用で形が崩れてしまうからというのが使い捨ての理由ではないようです。カップは使用後形を保っていても、その場で割って二次使用はしません。衛生的、穢れを避ける的な側面が大きいのでしょうね。

(うえの)

(C)Tomoko Ueno

うえのさんのお話を聞いて、たしかに、日本と比べて水が貴重、ということは「もったいない」ものも変わるのだとハッとしました。日本では洗って何度も使うことがゴミを減らすことにつながり、エコだという考えが一般的。でもネパールでは、土に還る器を手作りして使い捨て、水を節約する方がエコなのだと。

そもそも使い捨ての便利なプラスチックカップが出回りだしたのが十数年前くらいで、それ以前の使い捨ては専ら陶器や葉っぱでした。

葉っぱは、魚を包んだりもするので防腐効果を狙っているようです。
またバナナの葉も殺菌作用があってよいようです。

(うえの)

今世界では、サステナブルな取り組みとして、プラスチックゴミ削減の動きが広がっています。安くて便利だと瞬く間に広がったものが、長い目で見ると環境汚染につながると問題視されるようになったのです。

素焼きの器も葉っぱのお皿も、スピードや効率とは対極にある昔ながらのスローな器。でもサステナブルという観点で言えば、一周まわって最先端!?なんて思ったら、なんだか不思議な気持ちになりました。

日本のスローなよいところは?

最後にうえのさんに、「ここは日本がスローだ!」と思うところも教えてもらいました。

毎日ゆっくりと熱いお風呂に浸かれること。
ネパールでは水も燃料も貴重で、バスタブが一般的でないことからお風呂はとても贅沢なものになります。スーパー銭湯や岩盤浴が恋しいです。

(うえの)

たしかに!湯船に浸かって身も心もときほぐすひとときは、間違いなくスローな時間。毎日の習慣のようになってしまうと、つい当たり前のことに感じてしまいますが、とても贅沢なことでもあるんですね。

コロナウイルスの影響で落ち着かない日々が続きますが、今夜はいつもよりゆっくりとお風呂に浸かって、スローな時間を楽しみたいと思いました。

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イエモネ編集部

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