「外出自粛がうれしい」ひそかにそう思っている人はいませんか?「人が嫌いなわけではないけど、1人で過ごす時間の方が本当は好き」「どんなに楽しくても、人と交流するとどうしても疲れてしまう」そんな内向派にとって、外出自粛は福音かもしれません。この記事では、世界の内向派の声を紹介するとともに、そんな自分とどう付き合っていくべきかを見ていきます。
コロナウイルスの蔓延に伴い、世界中で外出自粛や都市封鎖(ロックダウン)などが続いています。学校や仕事が在宅に切り替わり、友人や家族にもなかなか会えない状況は、多くの人にとって辛く大変なもの。「コロナ疲れ」や「コロナうつ」という言葉が誕生したほどです。
しかし、中には「外出自粛が実はうれしい」と思っている人もいるのではないでしょうか。何を隠そう、実は私もその一人です! もとから内向的でインドア派の私は、面倒な飲み会やミーティングに参加する必要がない今、自分だけの世界に没頭できるのが最高に幸せ。
もちろん、このような災難がなかった方がよいとは思います。亡くなった人・愛する人を亡くした人のやりきれない気持ちを思うと心が痛みます。闘病中の人の速やかな回復と日常生活の再開を、深く祈っています。
「外出自粛がうれしい」―あまりポピュラーな意見でないことは確かですが、かといってこのように感じているのは私一人でもないようです。
世界の内向派の声を集めてみたよ
2020年4月8日、イギリスのフィナンシャル・タイムズ誌にコラムニスト、ルーシー・ケラウェイ氏による記事『ロックダウン下で幸せを感じてもいいの?』が掲載されました。記事の題の通り、ケラウェイ氏は世界中で多くの人が苦しんでいる中、家にいる時間が増えたことに対して幸せを感じるのは不謹慎なことなのだろうか、と考えを巡らせています。
ドラマ『NCIS』のアビー役で人気の女優ポーリー・ペレットは、USAトゥデイのインタビューに対し、「私は悪名高き引きこもりなの。どこかに行きたくないときは、いつも言い訳をして断ってきた。でも今はそうしなくてもいい。生まれて初めて私はクールな存在なのよ」と語っています。
確かに、普通であれば内向的な人は「陰キャラ」や「コミュ障」といったネガティブな言葉で呼ばれがち(世界は社交的な人を好む傾向があるように感じます)。でも今は状況が逆転しています。外部からの刺激がほとんどなくても幸せでいられる私たちが、ポジティブだと思われる時代が来たのです!
以下に内向派の声を綴った記事をまとめています。興味のある人はぜひ読んでみてください。
- “Is it OK to be happy in lockdown?” by Lucy Kellaway [Financial Timesで読む] (英語)
筆者は今自分を幸せにしてくれる5つのこと(食事、愛、仕事、ルーティン、庭)を挙げ、コロナウイルスの脅威が過ぎ去ったらまたいつもと同じ忙しい生活が戻ってくるのだから、今ぐらい息抜きして幸せを味わったっていいんだ、と結論付けています。 - “’Notorious recluse’ Pauley Perrette’s 7 stay-at-home tips: ‘I’m cool for the first time ever’” by Bill Keveney [USA TODAYで読む] (英語)
『NCIS』で人気の女優ポーリー・ペレットが、自分は内向派であるためロックダウンが続く今が幸せだということを語っています。また、自宅生活を快適に過ごすための5つのコツ(ペットを飼う、ガーデニングを始める、YouTubeで新しいスキルを身に着ける、古い友人と久しぶりに話をする、読書をする)を共有しています。 - “For Introverts, Quarantine Can Be a Liberation” by Andreas Kluth [Bloombergで読む] (英語)
社交的な人は他者との交流からエネルギーを得るのに対し、内向派は逆にエネルギーを消耗することを説明。そのため、社会的距離を保つことが重要になった今、内向派はエネルギーに満ち溢れており、素晴らしいことを成し遂げるであろう、という内容。 - “‘It’s Not So Bad’: Introverts And The Lockdown—Our Moment Has Come” [Forbesで読む] (英語)
内向派は社交的な人よりも今の状況を上手にとらえているのは確かです。しかし、内向派だからといって孤独や不安を味わわないわけではない、という内容。
なぜ幸せなのか、もう一度考えてみる
2020年4月5日、イギリスのエリザベス女王は世界の人々に向けて演説を行い、他者との交流が減った今こそ「落ち着いて、内省すること(Slow down and reflect)」を奨励しました。
エリザベス女王の演説はこちらから聞くことができます
(ノーカット版、日本語字幕付き)
今元気に満ち溢れている人ほど、一度目を閉じて「今私を幸せにしているものは何か」を顧みてみましょう。こうすることで、普段は社会の規範や期待などに隠れて見えなかった「自分にとって一番大切なもの」が見えてくるはずです。
それは、飼い猫と一緒に過ごせる時間が増えたことかもしれません。ずっと読んでみたかった本を読む時間ができたこと、もしくは、社交に対するプレッシャーがなくなったことかもしれません。小さなことでも構わないので、思いついたことを書き留めておくか、心の片隅にとどめておくといいですね。
そうすれば、将来日常が戻り辛いと感じることがあったら、これらを思い出して自分の生活を改善することができるはずです。パンデミックが終わったからと言って、以前の不幸な自分に戻る必要はありません。
また、自分が幸せを感じることができるのは、衣食住に不自由のない恵まれた環境にいるからだということも忘れないようにしたいですよね。感謝の心を持つこと、これは生涯にわたる幸福の秘訣です。
ありのままの自分を受け入れる
私は現在、世界で最もコロナウイルス感染者が多いアメリカのニューヨーク州に住んでいます。3月20日に州知事がロックダウン(休校、必要不可欠な業種以外の出勤禁止、外出制限など)を発表し、まだその終わりは見えません。
ロックダウン発表から私が自宅の敷地外に出たのは1回のみ。食料品の調達などは夫が担当しています。友人からは「よく気が狂わずにいられるね」と言われますが、実は過去1か月で私はこれまでにない深い幸せを感じています。その理由を考えてみると、根本は「ありのままの自分をようやく受け入れることができた」ということにあると思います。
人と過ごす時間よりも1人の時間の方が好き。毎日12時間睡眠をとるのが好き。ずっとわかっていた私の性格ですが、これまでは他人からどう思われるかを気にするあまり、無理して社交的になろうとしていたところがありました。
それが今、家から出たり他人と会ったりすることができなくなり、初めてフルに自分らしく過ごせるようになったのです。肩の荷が下りて気持ちが軽くなったような気がします。他の誰かになろうとしないで、自分らしく振舞うことがこんなにも気持ちのよいことだったなんて・・・!
周りの人から嫌われるんじゃないか、という不安はもちろんあります。しかし今のところそういった気配は全くありません(素敵な友人たちに恵まれたことに感謝!)。それよりも、ありのままの自分を受け入れたことで得られたプラスは、何とも比べ物にならないほど大きいのです。
「人が嫌いなわけではないけれど、1人で本を読んだり編み物をしたりする方が好き」
「どんなに楽しくても、人と過ごす時間はどうしても疲れがたまってしまう」
そんな性格でも、何も悪いことはありません。この機会に、ありのままの自分を受け入れる努力をしてみてもいいかもしれません。その先には、きっと新しい世界が待っているはずです。
その幸せを支援に変えよう!
しかし、周りに苦しんでいる人が多いことは確かです。私もコロナウイルスで亡くなった方や愛する人を亡くした方のやりきれない気持ちを思うと心が痛みます。
また、私が今笑顔でいられるのは、衣食住に不自由がなく健康な身体を持っているから。これは限りなく幸運なことです。この幸運に対して感謝の気持ちを忘れないようにしたいですね。
自分が幸せであることに対して罪悪感を感じるなら、そのポジティブな気持ちを活かして、困っている人を支援することが最善の行動ではないでしょうか。
今できることはたくさんあります。お気に入りのレストランからテイクアウトを頼んでみたり、病院に寄付をしたり。ふるさと納税でコロナウイルスによる被害を受けた地域を支援することもできます。ちょっと落ち込んでいる友人に電話をかけてみることだって立派な支援になります(内向派にとってはこれが一番難しいかもしれませんね笑)。
あなたの幸せの一部を必要としている人にわけてあげましょう。
[All photos by Stutterstock.com]
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ベロワ ニーナ
Nina Belova/ライター/翻訳者
北海道生まれ、福井県育ちのロシア人。東京大学地域文化研究北アメリカコースを卒業後、アメリカに移住。現在はフリーランスのライター・翻訳者として活動し、執筆分野は金融・技術・旅行・歴史など多岐にわたる。アメリカの田舎で夫・猫とともに自由なヒッピー生活を満喫中。
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