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POSTED BY ライター 林美由紀 掲載日: SEP 4TH, 2020.

まだまだ食中毒が気になる!せっかく作った料理を無駄にしないための豆知識

連日30度を超える日が続き、秋の気配を感じながらもまだしばらく気温が高い日が続きそうです。さて、この時期、食中毒が起きやすいのはご存知ですか。食中毒といえば、気温が高くなりジメジメと湿度の高い「梅雨」の時期が思い浮かぶ方も多いかもしれませんが、実は暑さが続く「夏」にも起こりやすいんです。今回は、北海道大学名誉教授、一般財団法人日本食品分析センター学術顧問で一般社団法人栄養改善普及会会長の一色賢司先生に食中毒についてお聞きしました。

「食中毒」ってなんとなくわかっているつもりだけど、その原因や予防法は意外とあいまいなこともあるかもしれません。専門家に聞いた「食中毒」の豆知識をご紹介します。

夏は食中毒が多い!?

厚生労働省が発表した「令和元年 食中毒発生状況」によると、過去3年の年間食中毒発生件数は、平成 29年/1,014 件(患者数 16,464 人)、平成 30 年/1,330 件(17,282 人)、令和元年/1,061 件(13,018人)と、いずれも 1,000 件を超えています。

その中でも蒸し暑い季節には特に「細菌」の食中毒が多発するそうです。

細菌たちは、生きるために必要な「温度、水分、栄養」がそろったときに活動が活発になり、仲間を増やします。

室温10度くらいで増殖し始め、30〜40 度で増殖スピードが一気に速くなることから、夏の気温はちょうど細菌たちが増殖するのに好都合な温度ということになるんです。

専門家に聞いてみました

Q.梅雨の時期が食中毒が多いと思っていましたが、夏も食中毒が多いのでしょうか。

一色先生-- 夏は食中毒菌の増殖に必要な温度等の条件が整います。そして、夏バテなどで人間の抵抗力が低下して、食中毒菌に対する感受性が高くなることなどが考えられます。

Q.特に家庭でよく起こる食中毒はどのようなものがありますか。

一色先生-- 食中毒は、対策がそれぞれの菌によって違います。その中でもサルモネラ属菌や病原大腸菌は死に至る場合もあるので、特に注意が必要です。これらの細菌の特徴や対処法を知って、食中毒を未然に防止しましょう。

それでは、1つずつ見ていきましょう。

サルモネラ属菌による食中毒

特徴

  • 生肉、卵の中にもいることがある

症状

  • 潜伏期は6~72時間
  • 激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐

対処法

  • 肉・卵は十分加熱する(75度以上、1分以上)
  • 卵の生食は新鮮なものに限る

黄色ブドウ球菌による食中毒

特徴

  • 人や動物に常在
  • 毒素は100度、30分以上の過熱でも無毒化されない
  • 乳製品、卵、畜産製品、穀類とその加工品、魚肉練り製品、お弁当、おにぎり、和洋生菓子などで発生例あり

症状

  • 潜伏期は1~3時間
  • 腹痛、下痢、吐き気、嘔吐

対処法

  • 手・指の洗浄
  • 調理器具の洗浄・殺菌
  • 手荒れや化膿などがある場合は、食品に直接手を触れない
  • 防虫・防鼠対策は効果的

カンピロバクターによる食中毒

特徴

  • 家畜、家禽類の腸管内に生息する
  • 飲料水、生野菜、食肉(特に鶏肉)、牛乳など、潜伏期間が長いので原因が判明しないことも多い

症状

  • 潜伏期は1~7日
  • 発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢、血便など

対処法

  • 調理器具を熱湯消毒し、よく乾燥させる
  • 肉と他の食品との接触を防ぐ
  • 食肉は十分加熱する(65度以上、数分)

ウェルシュ菌による食中毒

特徴

  • 人や動物の腸管、土壌、下水に広く生息する
  • カレーや煮物、煮つけなどの煮込み料理が原因になることが多い

症状

  • 潜伏期は8~12時間
  • 主に下痢と腹痛。嘔吐や発熱はまれ

対処法

  • 清潔な調理を心がけ、調理後速やかに食べる
  • 菌の増殖を阻止するため、加熱調理食品の冷却は速やかに行う
  • 食品を保存する場合は、10度以下か55度以上を保つ
  • 食品を再加熱する際には十分に加熱して早めに摂取する

※ただし加熱を過信しないこと

腸炎ビブリオによる食中毒

特徴

  • 海に生息
  • 刺身、寿司、魚介加工品などの魚介類、二次汚染による各種食品(漬物)に多い

症状

  • 潜伏期は8~24時間
  • 腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐

対処法

  • 魚介類は新鮮なものでも真水でよく洗う
  • 短時間でも冷蔵庫に保存する
  • 60度、10分間の過熱

病原大腸菌による食中毒

特徴

  • 牛・鹿の大腸に生息
  • 食肉・加工品(ハンバーグ)、生乳、野菜類、サラダ類、間接的に汚染された多様な食品に多い

症状

  • 潜伏期は4~8日間
  • 激しい腹痛、血液混入の水様下痢、発熱は通常なく嘔吐はまれ

対処法

  • 生食は避ける
  • 加熱殺菌、低温管理

食中毒を防ぐさまざまな工夫

また、私たちの祖先は、塩や味噌を加える、酢でしめる、砂糖で甘くする・・・など、食品が長持ちし、味わいや口あたりもよくなる方法を発見しました。

こうした、食べものと食べものの混ぜ合わせは、先人たちが生み出した知恵でもありますが、その中には「食品添加物」と呼ばれるようになったものも含まれています。

最近では「無添加」であることの素晴らしさが謳われることが多いのですが、なぜ、「添加物」にはあまりいい印象がないのでしょうか。

食品添加物とは?

食品のおいしさや味・香りに使われるのがうま味調味料、甘味料、香料など。また、栄養成分を補うビタミンやミネラル、安全性や品質を維持する保存料、酸化防止剤などがこれにあたります。

つまり、食品の品質や栄養価を保持させたり、安全性を高めたり、食品の製造や加工、調理、包装、運搬、貯蔵の際に補助的役割を担ったりというものや味や見た目をよくするためのものです。

例えば、中華麺のコシを生む「かんすい」や、豆腐を固める「にがり」、こんにゃくのアクを抜き、雑菌を防ぐ「消石灰」も大昔から使われている食品添加物なのです。

安全面は?

「食品添加物」と聞くと、体によくないようなイメージがありますが、安全面はどのようになっているのでしょうか。

現在では、合成添加物と天然添加物の区別なく「食品添加物」として厚生労働大臣の認可が必要です。

それらは、食品安全委員会というところで一日摂取許容量の設定などの安全性の評価が行われ、厚生労働省はその評価結果を受け、安全基準を定めているのだそう。

現在、私たちに届く食品にはその厳しい安全基準をクリアしたもの。
ですので、保存料などが使用基準を守って添加されていれば、健康に影響を及ぼすことはなく、安全に食べることができます。

無添加とは?

無添加とは、一色先生によると言葉の使用者とその意図によって意味合いは異なるといいますが、以下のように定義されます。

  • すべての添加物を使用しない食品
  • 一部あるいは特定の添加物を使用しない食品
  • 添加物を使用した意識がない食品
  • 添加物を使用しても検出されない食品

実は現在は、無添加表示には行政で定められたルールがなく、文字通り何も添加物が使用されていない食品もあれば、特定の添加物を使用しない食品など、安全性を確保するために保存料に代わる添加物を使い「保存料ゼロ」や「無添加」を謳っているものも多くあるといいます。

例えば、食品添加物の1つである保存料は、食品の腐敗を防ぎ、食中毒リスクを下げる役割がありますが、その役割を持つ保存料を使わない「無添加食品」は、食中毒のリスクが高くなってしまう場合があります。

つまり「無添加」=何も添加されていないとは限らないこと、また、無添加がゆえに腐敗や食中毒のリスクが上がることから、無添加=安全という訳ではないことは知っておきたいですね!

正確な知識を身に着け安全な生活を

テレビやインターネットや雑誌など、食中毒や食品添加物に関する情報が日々公開されています。

そんな中で科学的な根拠がない情報でも、なんとなくそうなのかな…と思っているうちにイメージが独り歩きしてしまうものも。

一色先生によると、「食品添加物は食文化を支えている点もある。もともとは、食べものと食べものを混ぜ合わせることで新しい食品を生み出すために進化してきた技術です」とのこと。

また、先生から食品添加物のことを知りたい場合は、一般社団法人「日本食品添加物協会(よくわかる食品添加物)」のサイトがわかりやすいのでおすすめだと教えていただきました。気になる方は、ぜひ、チェックしてみてくださいね!

なんとなく「無添加がよさそう」・・・「食品添加物は体に悪そう」ではなく、

気になることがあれば、食品のパッケージの裏を確認して、信頼できる正確な情報源で調べるなど、少しずつ正しい情報や知識を身に着けて、まだまだ暑い残暑の食中毒を予防していきましょう。

参考資料:味の素㈱ニュースレター
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Miyuki Hayashi/ライター

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスライター。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、クモの巣、絵本、漫画、子どもなど。グッとくる雑貨、ハンドメイド作品、文具、生き物、可愛いものとヘンテコなものを日々探しています。

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