「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、欧州オランダにも伝わりました。
今回は、そんなタイニーハウス・ムーブメントが生まれる遥か以前から存在した家の紹介です。中世の人々が体験した小ささに、きっと驚きますよ。
17世紀の面影を残すアムステルダムの街並み

オランダの首都アムステルダムは、美しい建物が数多く立ち並ぶ街。その街並みは、経済発展著しかった17世紀頃にベースが作られました。旧市街を中心として、建てられた当時に近い雰囲気のまま残されています。その特徴は、ひとつひとつの建物がひょろっと縦に長いこと。多くの建物が密接しているのであまり気が付かないかもしれませんが、横幅が狭く、縦(高さ)と奥にたっぷりスペースをとる「うなぎの寝床」スタイルなのです。
実は17世紀頃、オランダに「建物の間口の幅に基づいて計算される間口税」が導入されたため、税金逃れのために不自然なほどに幅の狭い家が建てられたことがその理由。その後、制度は廃止になりましたが、美しい昔ながらの景観を保つために、そのままの姿で残されているのです。
アムステルダムで最も小さい家

最も細い家には諸説ありますが、1738年頃に建てられたアウデ・ホーフ通りの家も「最も細い家」(小さい家)のひとつだと言われています。この建物は、幅2.02メートル、奥行き5メートルの3階建て。
元々は職人の工房として活用されていましたが、その後に店舗兼住宅など用途を変えながら、数世紀にわたりアムステルダムの街角に佇んでいます。2014年からは、「Het Kleinste Huis」(最も小さな家)という名前のティールームになりました。

またこの建物には、ドアが上下に分かれ別々に開閉する「ダッチドア」(Dutch Door)も採用されています。ドアの上側だけ開いているのが分かりますか?「ダッチドア」の意味は、そのものずばりの「オランダのドア」。北海道より緯度が北のオランダは、夏場も日本のような猛暑にはなりません。そのため、一般家庭にはほとんどがエアコンが普及していないのです(昨今の温暖化で新築住宅などには取り入れられることもあるようですが、日本に比べると普及はまだまだです)。その代わりにドアにも窓の役割をさせて、風通しをよくしたのですね。

地上階は、とっても可愛い茶葉屋さん。オーナーは、気さくなオランダ人ご夫妻です。


オリジナルブレンドの茶葉や、コーヒー豆が販売されています。お茶を購入すると、可愛いオリジナルのパッケージに入れてくれるんです。値段もサイズも手ごろなので、お土産にもいいかもしれませんね。
ふるえるほど可愛いティールーム


せっかくなので、素敵なティールームの様子もご紹介します。2階と3階は、身もだえするほど可愛らしい内装でまとめられています。

お店の自家製アップルパイ(1ピース)とスペシャルブレンドのお茶のセットが、7.50ユーロ(約900円)という大都市アムステルダムにしては良心的な価格で提供されています。予約が入っていなければ、ティールームで美味しいケーキとお茶をいただけます。けれど1フロア1ゲスト(グループ)なので、確実にここでのひと時をたのしみたければ、事前の予約がおすすめ。
(茶葉を買いに来るだけなら、予約は不要です)

幅約2メートルの狭小住宅を改装したショップなので、階段はかなりの急こう配。これは、上のフロアから階段を眺めた様子。上り下りは、なかなかスリリングです。でもこの狭さを楽しむために、ぜひ体験していただきたいですね。

ちなみに、こういったアムステルダムの小さい家の家具の搬出入は、窓から行います。階段だと、大きな家具は通過できませんからね。古い家には、この画像のようなフックが取り付けられているんです。ここに滑車を取り付け、窓の高さに吊り上げます。引っ越しや家具の買い物は一苦労なのではないでしょうか。

アムステルダムの昔ながらの建物の様子と、ステキなティールームが同時に楽しめる「Het Kleinste Huis」。アムステルダム旅行の際には、ぜひ訪れてみてください。
[All Photos by Naoko Kurata]
[Het Kleinste Huis](英語ページ)
>>>【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜はこちら
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倉田直子
Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー
2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
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