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三浦康子

POSTED BY 和文化研究家 三浦康子 掲載日: JUL 1ST, 2022.

7月の手紙やメールで使いたい「季節の美しい日本語」

梅雨が明け、本格的な夏を迎える7月。日本には、その季節に合った美しいことばがたくさんあるので、手紙やメールに季節を感じることばを使うと、心が和みやさしい気持ちになれるでしょう。そこで、各月に使いたいことばを3つずつ、和文化研究家の三浦康子がご紹介します。7月は「送り梅雨」「青田波」「遠花火」です。

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7月の美しい日本語~送り梅雨(おくりづゆ)

7月中旬から下旬にかけて、梅雨明けの時期を迎えます。梅雨が明けるころの雨を「送り梅雨」といい、大雨になったり、雷を伴ったりすることが多く、ときには集中豪雨になることも。「送り梅雨」には、もうこれで梅雨を送り出したい、梅雨が早く明けて欲しい、という願望が含まれているような語感があります。

やっと長い梅雨が明けて晴天が続いても、再び梅雨のようなぐずついた天気になることもあります。太平洋高気圧の勢力が安定しないと、梅雨前線が南下して雨が続くことがあるからです。これを「戻り梅雨」、「返り梅雨」、「残り梅雨」といいます。送ったり、戻ったり、残ったり、梅雨の去り際は離れがたい心情に似ています。

<例文>

  • さきほどは大きな雷に驚きましたが、送り梅雨のころ。梅雨明けも間近ですね。
  • 送り梅雨の今日この頃。もうじき夏本番となりますので、体調に気をつけてお過ごしください。
  • 戻り梅雨でぐずついた天気が続いていますが、お元気ですか?

7月の美しい日本語~青田波(あおたなみ)

「青田」とは苗が育ち一面が青々とした田んぼのことで、若苗色だった稲が夏の日差しのもとでぐんぐんと生長し、青々とした緑色に包まれていきます。青田の上を吹き渡る風を「青田風」、その風で青田が揺れる様子を「青田波」といい、青田のころの田端の道を「青田道」と呼びます。

青田道を歩くと稲の匂いが立ち上り、何とも気持ちのいいもの。なかなかそのような経験はできませんが、車窓に広がる青田に目を奪われたことはありませんか。波のように揺れる青田波は見るからに爽快で、すがすがしい気持ちにさせてくれます。

<例文>

  • 移動中に見た青田波にすがすがしい気分になりました。
  • ふと青田波を見たくなり、サイクリングに出かけました。
  • 青田風が心地いい季節になりましたが、お変わりありませんか。

7月の美しい日本語~遠花火(とおはなび)

「遠花火」とは遠くで打ち上げられている花火のこと。大きな爆音とともに花開くのが花火の醍醐味ですが、遠過ぎて音が聞こえない花火や遅れて音がかすかに聞こえてくる花火など、色鮮やかに浮かんでは消えていく遠花火にも情緒があります。

そんな夏の賑わいを感じさせる打ち上げ花火に対し、手もとで愉しむ線香花火も風流。日本人は線香花火の燃焼の様子にも心を寄せ、起承転結に分けて、牡丹→松葉→柳→散り菊と言い表しました。

ぱっと咲いて散る花火には、日本人の琴線に触れる魅力があるようです。

<例文>

  • お元気ですか? 遠花火を眺めながらこの手紙を書いています。
  • 露天風呂からみる遠花火、風情があっていいですね。
  • 今夜は遠花火を眺めながら、家で一杯やりませんか。

梅雨が明けて夏本番の7月。移ろう季節をこの時期ならではのことばで表してみてください。

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三浦康子

Yasuko Miura/和文化研究家

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで活躍中。「行事育」提唱者。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ365日』(朝日新聞出版)ほか多数。

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