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倉田直子

POSTED BY ライター/タイニーハウス・ウォッチャー 倉田直子 掲載日: FEB 5TH, 2020.

【スローなニュース】オランダのスーパーマーケットの「愛すべき無駄」

現代社会は、何事にもスピードと効率を求められます。無駄を排除し、必要最小限のコストと努力で速やかに成果を出さなくてはいけません。けれど、無駄にはきっと、種類がありますよね。本当に省いていった方がいい無駄と、省いてしまうと心が痩せ細ってしまう無駄があるとイエモネは考えています。
そんな愛すべき無駄にじっくりゆっくり向き合いたいと考え、イエモネは「スローなニュース」をピックアップしていこうと決めました。
今回は、オランダのスーパーマーケットで見つけた「愛すべき無駄」のお話です。

お子さまに供される無料フルーツの棚
お子さまに供される無料フルーツの棚
(c)Naoko Kurata

子どもにやさしい「愛すべき無駄」

全てではありませんが、オランダのスーパーマーケットにはよくこのような棚が設置されています。

お子さまに供される無料フルーツの棚
お子さまに供される無料フルーツの棚
(c)Naoko Kurata

「お子さまにみかんをどうぞ」と書かれています。棚の上段はバナナですが、下段にはみかんがあります。もちろんバナナも無料で食べてOK。

お買い物中のパパママに付き合う小さな子どもが、お腹を空かせたり、退屈して暴れて親を困らせないようにするためのサービスです。

スーパーの無料ゲームコーナーで遊ぶ子供
スーパーの無料ゲームコーナーで遊ぶ子ども
(c)hirodeo623

時には、子どもが自由に遊べるゲームコーナーも。これはこれで、買い物に時間がかかってしまいそう!でも子どもは楽しそうです。
そして上の画像には、子ども用のショッピングカートも写っています。誇らしそうにパパママの買い物を手伝っている子どもを、よく見かけます。そして、子どもがポールとフラッグつきのこのカートを押していることで、買い物中で気もそぞろになっている他の買い物客のカートとの接触事故も防ぎやすくなるのです。

子育て世代にやさしいサービスが充実していますね。

高齢者の様子に目を配る従業員たち

スーパーに無料でくるろげるコーナーが
スーパーに無料でくるろげるコーナーが
(c)hirodeo623

そして、オランダのスーパーマーケットが目を向けるのは、子どもばかりではありません。高齢者にもあたたかいサービスが始まってきています。
これも全てのスーパーマーケットではありませんが、大型店舗には無料でくつろげるテーブルが設置されていることもあります。そしてなんと、コーヒーやお茶が無料でいただけることも。日本にも休憩所付きのスーパーはありますが、ここまで充実したドリンクのラインナップはなかなか見かけません。
一人暮らしの孤独な高齢者たちが、他の人との交流を求めてここで休憩していることがしばしばあります。

無料で供されるコーヒーやお茶
無料で供されるコーヒーやお茶。
(c)hirodeo623

そういった孤独な高齢者たちと交流を図るのは、一般の人たちだけではありません。
2018年以来、オランダ最大手スーパーマーケット「Albert Heijn」の、デンハーグという街にある42支店すべてに、人々の孤独に目を配る従業員が配置されているのだとか。オランダメディアの報道によると、スーパーマーケットも人々の「良い隣人」になりたいと考えており、必要に応じて顧客を支援できる体制を整えたのだとか。
どういうことかというと、スーパーマーケットの従業員が、利用客(主に高齢者)の孤独な様子、物忘れや通常以上に緩慢な様子から何らかの信号をキャッチすると、必要に応じて専門家に紹介したりするのだそう。そういった判断をするのは、主に「聴取者」として訓練されたスタッフ。毎日コーヒー売り場がどこにあるかを尋ねる顧客だったり、よく不満やクレームを言ってくるといったタイプの顧客に助けを必要とする合図を見出すといいます。

オランダ特産品であるチーズのコーナー
オランダ特産品であるチーズのコーナー
(c)Naoko Kurata

もちろん利用者の個性やプライバシーの問題もあるので、すべてが上手くいくわけではないようです。けれど、スーパーマーケットが見返りなしでそこまで心がけるってすごいですよね。日本でも少子化と高齢化社会が問題となってきています。ぜひこういった人々にも愛ある目線を送り、ゆっくり向き合える社会であってほしいとイエモネは願っています。

[Albert Heijn ontfermt zich over eenzame klanten: ‘We willen óók een goede buur zijn’]

倉田直子

Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

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