「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、欧州オランダにも伝わりました。
今回は、オランダのタイニーハウス・ムーブメントを牽引し続けている「街」の紹介です。
オランダで最も新しい、自由の街

その街の名前は、アルメレ(Almere)。アムステルダムから東に約30kmの海沿いに位置しています。干拓工事で国土を広げてきたオランダで、1984年に基礎自治体(ヘメーンテ)が成立したまだ新しい自治体です。まだ35年程度の歴史しかありませんが、アムステルダムにも通勤圏内であるという地理的条件から、急発展をとげています。
アルメレが人気を集める理由は、アムステルダムへの近さの他にも、「自由に家をデザインできること」があると言われています。意外に思われるかもしれませんが、自由を愛する国オランダでも家に関しては多くの規制が存在します。

昔ながらの街並みを保持するオランダにおいて、「個人で家を新築することはオランダ人にとって現実的ではない」と現地の知人は口をそろえて言います。そのため、昔ながらの家をリノベーションしつつ住む、というのが一般的なのです。
でもアルメレは違います。この誕生から約35年の新しい街には「昔ながらの街並み」が存在しないため、規制がなくどのような家を建てても構わないのです。そのため「それはアルメレでは可能だ」(Het kan in Almere)というのが合言葉になっているのだそう。
アルメレに佇む、自由な家たち

これは、アルメレの住宅街で撮影した写真です。異なる壁の色に、不揃いな屋根の形。左端の家なんて、傾いていますね。他の街では見かけない光景です。

こちらは、青い家に注目です。「外壁の色は青にする」というコンセンサスは施工主の家族で取れていたのですが、「ではどの青色にするか」で意見がまとまらず、結局は家族の好きな青色すべてを取り入れてミックスしたのだとか。
このように「何でもアリ」な街並みはオランダでは非常に珍しく、わざわざ住宅街で家を眺めるために他の街からやってくる人もいます。まるで観光地のようにもなっているアルメレをここまで有名にしたのは、1980年代に開催された2つのイベントによるところが大きいと言われています。
革新的な住宅を実現し続けるデザインコンテスト


そのイベントとは、アルメレが1982年に開催したデザイン・コンテスト「ファンタジー」(De Fantasie)と1985年の「リアリテイト」(De Realiteit、英語ではReality)。どちらも、建築家が自由にデザインした入賞作がアルメレ内に実際に建設され、今でも外観を見学することも可能です(その大半には、建築家自身が実際に住んでいます)。現代ではお馴染みのコンテナハウスや100%太陽光発電でまかなうソーラーハウスなど、当時は革新的だった家が現実化していきました。それを聞くだけでも、アルメレ市がいかに革新的な街だか感じ取れますよね。


そして時を超え、2016年にはアルメレでタイニーハウスのデザインコンテストが。245の応募作から12の入賞作品が実現化しました。

過去のデザインコンテスト同様、建築されたタイニーハウスには現在、実際に人が住んでいます。
このように、オランダにおけるタイニーハウスおよび自由な住宅デザインの聖地であるアルメレ。まさに、オランダ住宅の最前線であると言っても過言ではありません。オランダ観光の機会があれば、ぜひアムステルダムから少しだけ足を延ばしてアルメレを散策されてみてはいかがでしょうか。
[All Photos by Naoko Kurata]
[アルメレ自治体ホームページ]
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【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜
>>>【スローなニュース】オランダのスーパーマーケットの「愛すべき無駄」

倉田直子
Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー
2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
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