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倉田直子

POSTED BY ライター/タイニーハウス・ウォッチャー 倉田直子 掲載日: FEB 23RD, 2020.

小さな家の豊かな暮らし【22】オープンソース住宅の「WikiHouse」

「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

アルメレに建つ「WikiHouse」のモデルハウス
アルメレに建つ「WikiHouse」
(c)WikiHouse

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、他国にも伝わりました。

今回は、設計図などを無料で世界に公開している“オープンソースの家”「WikiHouse」のご紹介です。

 

イケアの家具のように建てる「WikiHouse」

 

木材の切り出しデータもすべて公開されている
木材の切り出しデータもすべて公開されている
(c)WikiHouse

そもそもオープンソースとは、ソフトウエアのソースコードなどを主にインターネット上で公開し、誰でも改良または機能追加できるようにすることを指します。「WikiHouse」の主宰者である建築家のアラスタ・パーヴィン氏は「持続可能な建築ソリューションは誰にとっても共通の知識であるべき」という考えのもと、誰でも低価格で簡単に建てられるような家を作ろうと決心しました。「WikiHouse」は、そんな彼とデザイナーやエンジニアたちによって公開された、オープンソースの建築組み立てキットなのです。

カットされた木材を運ぶボランティアたち
カットされた木材を運ぶボランティアたち
(c)WikiHouse

では実際に建てる時は、公開されたソースをどのように使用するのでしょう。
最初に、「WikiHouse」のホームページから3Dの設計図面をダウンロードします。そのデータをCNCマシン(コンピュータ制御装置つき木材加工機)に供給し、家の組み立てに必要な部品を合板から切り取ることができるのです。

そして組み上げをわかりやすくするため、パーツには番号が振られています。そういった様子から、「WikiHouse」は「まるでイケアの家具組み立てのような家」と例えられることがよくあります。そう言われると、イメージしやすいですね。

 

アルメレに実際に建てられたモデルハウス

 

アルメレに建つ「WikiHouse」のモデルハウス
アルメレに建つ「WikiHouse」のモデルハウス
(c)WikiHouse

実は、以前の記事でご紹介したオランダの「アルメレ」という街には、実際に「WikiHouse」の「PIONIERSWONING」というタイプのモデルハウスが建てられています。

アルメレに集合したボランティアたち
アルメレに集合したボランティアたち
(c)WikiHouse

このように実際に家を一軒組み立てるには、どれくらいの人手と時間が必要なのでしょう。「WikiHouseNL」(WikiHouseのオランダ支部)に問い合わせてみたところ、「1日平均6人のボランティアで10日間の組み上げを行いました。 けれど、それは合板部分とアルミ素材のみの作業でした」という回答をいただけました。

建築中の「PIONIERSWONING」内部の様子
建築中の「PIONIERSWONING」内部の様子
(c)WikiHouse

実際に人が生活するための完全な状態(電気や水回り、内装など)に整えるためには、もっと時間がかかるそうです。「そうですね、3か月くらいと言っておきましょう」とのことでした。ちなみに電気は、屋根に太陽光パネルを設置しての自家発電もOK。

「イケア家具」との比較があるので、失礼を承知で正直に言うと、もっとイージーな作業を想像していました。けれど逆に、それだけ時間がかかるのは、しっかりとした家である証拠ですね。

建築中の「PIONIERSWONING」内部の様子
建築中の「PIONIERSWONING」内部の様子
(c)WikiHouse

材料によっては、60年住み続けることができるそう。乾燥した気候で害虫などの被害も避けられたら、もっと長持ちするだろうという予測もあります。60年以上住める可能性のある家のデータが無料で公開されているなんて、改めて驚きです。

21世紀はシェアの時代だとはよく言われますが、「WikiHouse」は建築に関する知恵もシェアする、時代のシンボルのような家ではないでしょうか。

[WikiHouseNL]
[WikiHouse]

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【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜

>>>【いくらで建てられる?】夢のデザイナーズハウス

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倉田直子

Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

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