8月初旬(2022年は8月7日)に「立秋」に入ると、暦の上では秋となります。日本には、その季節に合った美しいことばがたくさんあります。手紙やメールにその時季ならではのことばを使うと、心が和みやさしい気持ちになれるでしょう。そこで、各月に使いたいことばを3つずつ、和文化研究家の三浦康子がご紹介します。8月は「蝉時雨」「木霊」「行き合いの空」です。
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8月の美しい日本語~蝉時雨(せみしぐれ)
「蝉時雨」とは、たくさんの蝉が一斉に鳴く声を、時雨(晩秋から初冬にかけて降るにわか雨)が降る音に見立てたことばです。蝉の声が大きくなったり止んだりする様子が、降ったり止んだりする時雨のように思えるからです。
蝉は夏に羽化して鳴きだすので、蝉の声を聞くと夏到来を実感します。蝉の大合唱は暑さを助長することが多いのですが、蝉時雨と表現すると涼し気な趣きを感じさせてくれるでしょう。時雨はかき氷の名称としても親しまれており、何となくひんやりとしたイメージがあることや、時雨の語感から、情緒を感じるのかもしれません。
蝉にも種類があり、「ミーンミーン」と鳴くミンミンゼミや「ジリジリ」と鳴くアブラゼミは夏の盛りに鳴きます。「カナカナ」と鳴くヒグラシは夏の終わりを告げ、「ツクツクボーシ」と鳴くツクツクボウシは秋を告げる蝉。蝉の声が季節の移ろいを知らせてくれているのです。
<例文>
- 蝉時雨が降りそそぐ頃となりましたが、お元気ですか。
- プレゼンがうまくいき、蝉時雨が心地よく感じる昼下がりです。
- 蝉時雨が故郷の夏を思い出させてくれました。
8月の美しい日本語~木霊(こだま)
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「ヤッホー」と叫んだら「ヤッホー」と返ってくる……山で音が反響し、遅れて聞こえる現象を「こだま」「やまびこ」といいますが、漢字では「木霊」「山彦」と書きます。昔の人は、山で声が返ってくるのは樹木に宿る精霊のしわざだと思ったので「木霊」というわけです。「山彦」は山の神様が返事をしてくれるのだと考え、声の主に男子の美称である彦をつけ「山彦」と呼ぶようになったといわれています。
日本には「山開き」をしている期間しか登山できない山があります。古来、山は神仏がいる神聖な場所だと考え、神霊を祀っている霊山や、山そのものを崇拝の対象にした山岳信仰があり、聖地とされる山には山伏や高僧などしか入れませんでした。江戸時代になると一般の人も山に登ってお参りをしたいと願うようになり、夏の一定期間だけ入山を許す「山開き」をするようになりました。神仏がいるところに人が入るため、神仏を祀って安全を祈願する儀式が行われています。
木霊が返ってくるとうれしくなるのは、受け入れられたような気持ちになるからかもしれませんね。
<例文>
- お元気ですか? 夏山で木霊を楽しんだ日々が懐かしいです。
- 久しぶりに山で叫んだら、こだまが返ってきて嬉しくなりました。
- ストレス発散を兼ねて大声で叫んだら、山彦が返ってきてスッキリ。たまにはいいですね。
8月の美しい日本語~行き合いの空(ゆきあいのそら)
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2つの季節が行きかう空を「行き合いの空」といいます。行き合いは出会いという意味で、昔の人は空の上で季節が出会うと考えたのでしょう。
巡る季節の中でも、とくに夏から秋へと移り変わるころに「行き合いの空」を使います。入道雲のような夏らしい雲と、うろこ雲やいわし雲、刷毛でスッと描いたようなすじ雲などの秋らしい雲が同時に見られる空です。その様子は、名残惜しそうな夏の雲と助走し始めた秋の雲が挨拶を交わしているようにも思えます。行き合いの空を眺めていると、季節が変わりつつあることを実感します。
<例文>
- 厳しい残暑が続いていますが、行き合いの空に秋の気配を感じます。
- 入道雲の上にいわし雲。行き合いの空を眺めながら移り行く季節を感じています。
- 行き合いの空に秋の訪れを感じる頃となりましたが、ご機嫌いかがでしょうか。
夏から秋へと歩みを進めていくこの時期は、自然をいつくしむことばが心に響きます。
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三浦康子
Yasuko Miura/和文化研究家
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで活躍中。「行事育」提唱者。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ365日』(朝日新聞出版)ほか多数。
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