「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。
「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、欧州オランダにも伝わりました。
今回は、環境への負荷を最小限に抑えられるタイニーハウスのご紹介です。しかも、家の一部には昔ながらの日本の知恵も採用されているのだとか。一体どういうことなのでしょう。
黒い外観の秘密

今回ご紹介するのは、「Tiny TIM」と呼ばれる黒いタイニーハウス。
このタイニーハウスの黒さの秘密は、なんと火で加熱処理を加えられているからなんです。木材の表面を焼いて炭化させることで、耐候性・耐久性が増すのだとか。
実はこのテクニックは、もともと「焼杉板」と呼ばれる日本由来の技術。今でも西日本の一部などでは現役の製法だそうですが、それが遠いオランダでも活用されていて非常に驚きです。このTiny TIMの登場以来、オランダのタイニーハウスには焼杉板を用いたモデルが増えた気がします。

木材に火のエネルギーが加わったせいか、気が滅入るような曇天の下でも家からは不思議な力強さと存在感を感じます。
ちなみにこの焼いた木材はそのままでも使用できるそうですが、Tiny TIMでは表面コーティングを施して服などが汚れないように配慮しているのだとか。住むとなると外壁も毎日身近にあるので、そういう気づかいはうれしいですね。
ウッディで明るい室内

室内は、黒い外壁とはうって変わって、木材そのものの色味を生かした明るい雰囲気です。オランダのタイニーハウスを取材して感心するのは、ベッド以外にも必ずソファなどのリラックス・コーナーが設けられていることです。狭いスペースに生活しているからこそ、そういう空間が必要なのかもしれませんね。

タイニーハウスのベッドはロフトにあることが多いですが、このTiny TIMのベッドは、なんと引き出し式でした。寝る時だけ引き出せる省スペース設計。しかも、そのベッドの下にも引き出しがあり、隙あらば収納コーナーが設けられています。抜け目ないですね!

ベッドを収納しているスペースの上には、ミニキッチンとバスルームといった水回りが。実はこの「水」は、Tiny TIMを語るうえで大きなキーワードになっています。
自然エネルギーと世界初のグリーン浄水システム

タイニーハウスに住む人、造る人の多くがそうであるように、この黒いタイニーハウスを手掛ける「Tiny TIM」も環境保護を気をかけています。屋根の太陽光発電パネルはもちろんのこと、風力発電用の風車まで備えて、自然エネルギーの活用にこだわっているのです。

さらにさらに、このTiny TIM最大の特徴はこの壁面ガーデンの内側に隠されています。実はこの6平方メートルの壁面ガーデンは、世界初の技術を採用した浄水装置になっているのです。
このガーデンの内側には複数のタンクがあり、雨水はもちろんのこと、この家から出たシャワーやトイレの排水も何度も植物のフィルターを通すことで再利用可能な清潔な水に変わるのだとか。

このシステムを採用することでTiny TIMに住むための生活用水はすべて雨水で賄うことができ、一人当たり年間1万5千リットルの節水になる計算なのだそう。Tiny TIMはこのシステムを経た浄水は「飲むことができる」と自信を見せていますが、気になる人のためには、キッチン部分に水道水を貯められるタンクを別途設置することもできるそうです。これまた、柔軟性に富んでいますね。

オランダ人の環境意識と、日本発の焼杉板という技術が合わさって生まれたTiny TIM。環境負荷を少なくするというコンセプトは、普通の一般の家も見習う点がありそうですね。ぜひ参考にしたいタイニーハウスです。
[All Photos by Naoko Kurata]
[ Tiny TIM]
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倉田直子
Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー
2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
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