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POSTED BY ライター/タイニーハウス・ウォッチャー 倉田直子 掲載日: DEC 30TH, 2019.

小さな家の豊かな暮らし【14】「3Dプリンターの家」 in オランダ

「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

運河前にたたずむ3D プリンターの家
運河前にたたずむ3D プリンターの家

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、欧州オランダにも伝わりました。
タイニーハウス・ムーブメントは、最新のテクノロジーからも注目されているようです。今回は、3Dプリンターで作られたタイニーハウスをご紹介します。

 

3Dプリンターを用いた建築デザイン会社「DUS architects」

 

アムステルダム中央駅北側の運河
アムステルダム中央駅北側の運河

その3Dプリンターで作られたタイニーハウス「3D Printed Urban Cabin」は、「DUS architects」という企業が2015年にクリエイトした作品です。アムステルダム中央駅から、渡し船のようなフェリーで北側の対岸に渡ったエリアにあります。

「DUS architects」セミナールーム
「DUS architects」セミナールーム

この「DUS architects」が見学会を実施してくれたことがあり、その際に取材させてもらいました。
そこではまず最初に、3Dプリンターの基礎知識のレクチャーが。「DUS architects」オフィス内のセミナールームのような場所で、PR担当者が素材などの説明をしてくれました。

3Dプリンターに使う素材チップ
3Dプリンターに使う素材チップ

数年かけて様々な材料の調合を研究した結果、現在は右の「the bio print material」を約80%、その他の素材約20%という配合で使用しているそう。この素材は、一度なにかの作品にした後も、再びチップに戻して別の作品に再利用できるそう。素材がゴミにならず、環境にも優しいんですね。

3Dプリンター製プランター
3Dプリンター製プランター

ちなみにDUSオフィス内には、3Dプリンターで作られた小物が沢山ちりばめられていました。先ほどの画像で、材料が入れられていたボウルも3Dプリンター製です。

大型3Dプリンターの見学

大型の3Dプリンター
大型の3Dプリンター

彼らのアトリエである作業スペースも、同じ敷地内にあります。画面左側に見える巨大な銀色の箱が、DUSの巨大3Dプリンター初号機。箱の上部がオペレーション・ルームになっているのだとか。そして右が後継機である2号機。オペレーションは別室で行えるように改良されています。

3Dプリンターのデモンストレーション
3Dプリンターのデモンストレーション

2号機のデモンストレーションも見せてもらえました。プリンターから素材が筋状に出され、それが層をつみあげていくのです。

ロボットアーム
ロボットアーム

稼働はしていませんでしたが、ロボットアームもありました。様々な形状に対応できそうですね。
そしていよいよ、満を持して「3D Printed Urban Cabin」の実物見学に向かいます!

「3D Printed Urban Cabin」を実体験!

「3D Printed Urban Cabin」
「3D Printed Urban Cabin」

3Dプリンターで作られたタイニーハウス「3D Printed Urban Cabin」は、DUSの敷地内に設置されています。全部で8つのパーツを組み合わせて構成されているのだとか。室内の面積は8平方メートルで、正真正銘のタイニーハウスです。

「3D Printed Urban Cabin」の入り口側
「3D Printed Urban Cabin」の入り口側

ガラスドアで作られた入口は、こちら側。キャビンにつながる小道も、3Dプリンター製の枠に砂利が入れ込まれています。
ちなみにキャビン横(画像右端)に置かれた丸みを帯びたモノは、なんとバスタブです!ちょっとした露天風呂ですね。

「3D Printed Urban Cabin」入り口横にあるステップ
「3D Printed Urban Cabin」入り口横にあるステップ

入口横のステップや床部分には、環境にやさしいエコ・コンクリートが流し込まれています。この取材日は嵐のような強風だったのですが、こういった「重石」のおかげでキャビンは微動だにせずしっかりと立っていました。壁部分にコンクリートは入っていないそうです。

「3D Printed Urban Cabin」の窓辺
「3D Printed Urban Cabin」の窓辺

こちらは、窓側。しっかりコンクリートで台座が作られているので、窓辺に腰かけても大丈夫。

実際の3D プリンターハウス住人はまだ

「3D Printed Urban Cabin」
「3D Printed Urban Cabin」

3Dプリンター本体やプロダクトを間近で見ることができて、そのダイナミックさに胸が高鳴りました。どちらかというと木材やレンガなど、昔ながらの建材を使うイメージが強いタイニーハウス・ムーブメントと、このような最新テクノロジーが融合したのが意外な組み合わせでした。けれど分解・再利用ができるので環境への負担も少なく、一般的なタイニーハウス愛好者との相性も非常に良いのではないでしょうか。

ただし、まだこの3Dプリンターの家は実用化されていないのだそう。確かに水回り問題など、解決しなければいけないことが多いですからね。
実際に住めるような3Dプリンターの家が実現する日が楽しみです。

[All Photos by Naoko Kurata]
[DUS]

>>>バックナンバーはこちら
【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜

倉田直子

Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

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