ニンジンはβカロテンが豊富な緑黄色野菜です。和洋中さまざまな料理に使いやすく、サラダなどの生食もOK。鮮やかなオレンジ色が料理の見栄えもよくしてくれますよね。「独特の風味が苦手」という人もいますが、切り方や調理方法次第で食べやすくすることもできますよ。いろいろな切り方やメニュー、大量消費のアイデア、鮮度を保つ保存方法、使い勝手のいい冷凍方法などを紹介します。
>>>オレンジの食べやすい切り方は?種類や保存法も【専門家監修】
【特徴】主流は西洋系の「五寸ニンジン」。春先のニンジンは甘くやわらかい
ニンジンはセリ科の野菜で、パセリやセロリの仲間。主にオレンジ色の根の部分を食べる根菜ですが、葉はパセリのような香りや苦みがあり、ハーブや香辛料にも使われています。
原産地はアフガニスタンで、そこからヨーロッパ方面に伝わった太くて短い根の西洋系と、中国に伝わった細長い根の東洋系の2つに大別されます。
日本へは、江戸時代に中国から東洋系、明治時代にアメリカ経由で西洋系が伝来。西洋系は栽培期間が短く、根が短いので収穫しやすいことから栽培が盛んになりました。
現在の主流は、長さ15〜20cm程度でオレンジ色の西洋系「五寸ニンジン」です。東洋系で流通しているのは、正月料理によく使われる、根が細長くて赤い「金時ニンジン」。他には、表皮は紫色で芯はオレンジ色の「紫ニンジン」、長さ10cm程度でそのままサラダなどに使える「ミニニンジン」などがあります。
ニンジンは6〜11月頃は北海道や青森県、11〜5月頃は千葉県、徳島県、茨城県など、産地を変えながら1年通して流通。なかでも3〜5月に収穫されたニンジンは、寒さに当たって甘くやわらかいと言われています。
【選び方】オレンジ色が濃く鮮やかなもの、軸の切り口が小さいもの
オレンジ色が濃く鮮やかで、表面がなめらかでツヤとハリのあるものが良品。葉との切り口にあたる軸の部分が小さいものの方が、肉質がやわらかく甘いとされています。
軸の切り口が大きいものや、表面に割れが入っていたり黒ずんでいたりするもの、肩の部分に緑色が入っているものは避けてください。
葉付きの場合は、葉の先までピンとしてみずみずしく、鮮やかな緑色のものを選びましょう。
【食べ方】生食でもOK。大量消費なら冷蔵保存できる副菜がおすすめ
ニンジンは、カレー、シチュー、炒め物、煮物、鍋物、きんぴら、ナムル、スープなど、さまざまな料理に活用できます。千切りニンジンと卵を炒める沖縄の郷土料理「ニンジンしりしり」も、今では日本中に広まっていますね。
生食では、野菜スティック、キャロットラペ(フランスのニンジンサラダ)、漬け物など。すりおろしてケーキやクッキーに使っても、ニンジンの甘みが生かせます。
大量消費したいときは、きんぴら、しりしり、キャロットラペ、ナムルなど、冷蔵庫で保存できる副菜にするのがおすすめ。大量の千切りが大変なときは、千切りスライサーがあると便利です。
葉には独特のほろ苦さがありますが、炒め物にしたり、ツナ缶やマヨネーズと和え物にしたりと、油と一緒に調理すると苦みが和らいで食べやすくなりますよ。
【切り方】メニューに合わせて切り方を選ぼう
ニンジンは切り方によって食感や火の通り、味の染み加減が変わってくるので、レシピによって使い分けてみましょう。
■乱切り
不規則な形に切ることで断面が多くなり、味が染み込みやすくなります。カレー、シチュー、煮物でニンジンの存在感を出したいときに。
■輪切り
繊維を断ち切るように切るのでやわらかい食感になります。煮物や鍋物、スープ、グラッセなど、料理によって厚みを調整しましょう。輪切りにしてから型抜きして使っても◎。
■半月切り、いちょう切り
輪切りと同じくやわらかい食感になり、より火が通りやすくなります。カレーや煮物でニンジンの味を主張させたくないときや、スープなどに。
■短冊切り
繊維に沿って切るのでシャキシャキした食感に。味は染み込みにくくなりますが、表面に味が絡みやすくなります。炒め物や焼きそばの具として。
■細切り、千切り
繊維に沿って切り、火を通すときはサッと短時間で歯触りを残すのがおすすめ。きんぴら、しりしり、ナムルなどに。
■みじん切り
食感がわかりにくくなり、味の主張も弱まります。千切りよりも火が通りやすいので、ミートソース、ハンバーグ、チャーハンの具などに。
【保存】日持ちする野菜。水分を拭き取って野菜室に立てて保存を
ニンジンは比較的日持ちする、保存しやすい野菜です。水分があると傷みやすいので水気を拭き取り、乾燥しないように1本ずつペーパータオルや新聞紙で包んでからポリ袋に入れ、野菜室に軸を上にして立てて保存を。3週間程度保存可能です。
カット済みのものはぴったりとラップをして野菜室で保存し、3〜4日を目処に使い切りましょう。
使い切れないときは冷凍保存も可能です。半月切りやいちょう切り、短冊切り、千切り、みじん切りなど、使いやすい薄い形状にカットし、小分けにしてラップをしてから冷凍用保存袋へ。約1カ月保存できます。乱切りや輪切りなどの厚みのある切り方は、食感が悪くなってしまうので不向き。
使うときは凍ったまま生のニンジンと同じように調理してOK。サラダなどの生食には向かないので、加熱調理に使ってください。半月切りやいちょう切りはスープに、短冊切りは炒め物に、千切りはきんぴらやしりしりに、みじん切りはひき肉料理やチャーハンなどに使えます。
葉付きを入手した場合は、そのままだと葉に栄養を奪われてしまうので、すぐに葉と根を切り分けて。葉は傷みやすいので、その日のうちに調理しましょう。
【栄養・効果】βカロテンが特に豊富。油と一緒に調理すると吸収率アップ
ニンジン(皮なし)の可食部100gあたりのエネルギーは30kcal。緑黄色野菜のなかでもβカロテンが特に豊富で、カロテンの名称はニンジンの英名「Carrot(キャロット)」に由来しています。
βカロテンは体内でビタミンAに変化して、皮膚や粘膜を健やかに保ったり、免疫力を高めてくれたりします。また、抗酸化作用もあるため、がんや生活習慣病の予防効果も期待できます。
ニンジンのβカロテンは皮の近くに多く含まれているため、よく洗って皮ごと調理するのがおすすめ。皮が気になるときは、できるだけ薄くむきましょう。
βカロテンは脂溶性なので、油で炒めたりドレッシングで和えたりなど、油と一緒に調理すると吸収されやすくなって、効率よく摂取できます。
葉にもβカロテンが含まれ、カルシウム、鉄、ビタミンC、葉酸などは根よりも豊富。葉付きを入手したときは葉も捨てずにいただき、たっぷり栄養素を摂取しましょう。
監修:食のスタジオ(https://www.foodst.co.jp/index.html)
レシピ開発だけでなく、コーディネートや撮影、編集、栄養アドバイスまで手がける食のプロ集団。健康・美容・介護食・離乳食などの専門レシピまであらゆるカテゴリーに対応。監修や編集を手がけた書籍は約100冊にも及ぶ。
栄養監修:内山由香
「食のスタジオ」管理栄養士、フードコーディネーター。女子栄養大学卒業後、食のスタジオにてレシピ開発、料理撮影、栄養計算等の業務を担当。作りやすく、子どもから高齢者まで食べやすい家庭的な料理やつくりおきレシピが得意で、忙しい人でも身近な食材で簡単に作れるレシピを多く開発している。『しっかり食べてきれいになる たんぱく質のつくりおき&らく旨おかず』『組み合わせ自由自在つくりおきシリーズ』(西東社)『朝10分!中高生のラクチン弁当320』(学研プラス)など著書多数。
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はな
hana/編集/ライター
コーヒーチェーン副店長から編集の道へ。現在は保育園児の母とフリーランス編集者の2足のわらじを履く、なんちゃってワーキングマザー。スポーツ観戦が生活の一部で、贔屓チームの勝敗が体調に影響を及ぼす厄介な体質。ワールドカップの日本開催を機にラグビーも勉強中。
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