現代社会は、何事にもスピードと効率を求められます。無駄を排除し、必要最小限のコストと努力で速やかに成果を出さなくてはいけません。けれど、無駄にはきっと、種類がありますよね。本当に省いていった方がいい無駄と、省いてしまうと心が痩せ細ってしまう無駄があるとイエモネは考えています。 そんな愛すべき無駄にじっくりゆっくり向き合いたいと考え、イエモネは「スローなニュース」をピックアップしていこうと決めました。今回は、コロナ危機の際に、高齢者の孤独を救おうと立ち上がった美術館のお話です。

©︎Naoko Kurata
革新的なアムステルダム国立美術館
今回のお話の舞台となるのは、欧州オランダのアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)。まず初めに、少しこの美術館の紹介をさせてください。アムステルダム国立美術館は1800年設立の、歴史ある主要美術館のひとつですが、2004年より改修工事に入り休館。9年にもわたる休館を経て、2013年4月に新たな建物で再オープンしました。その再開前の2012年10月、リニューアル開館に先立ち美術館が公開した公式ホームページが世界中を驚かせたのです。
公式ホームページの1コーナーに「Rijksstudio」というコンテンツがあるのですが、なんとその中で美術館の所蔵作品12万5000点の高精細画像を著作権フリーで開放することを宣言。「このデジタル全盛期に、出回る粗悪な画像で粗悪な模造品が作られることは避けられない」「それならば、我々が高画質な本物の画像を公開したほうがよい」とその理由を美術館が述べたのです。
【Wat kun je doen met je Rijksstudio?】(Rijksstudioで何ができるの?)
「Rijksstudio」の詳細は、上のリンクをご参照ください。
このようなエピソードからも、アムステルダム国立美術館は歴史がありながらも革新的な美術館なのだとお判りいただけると思います。
コロナ禍で深まる高齢者の孤独

2020年、そんなアムステルダム国立美術館を空前の危機が襲います。そう、コロナパンデミックです。オランダもその影響から逃れることができず、2020年3月中旬からロックダウンを開始。美術館も一時休業を余地なくされ、多くのスタッフが自宅待機となりました。
オランダでは他にも、高齢者は免疫力が低いリスクグループとみなされ、「同居家族以外との面会は推奨されない」という国の指針により別の場所にいる子どもや孫、お友達とのお付き合いが断たれてしまったのです。この時期オランダでは、高齢者の孤独が社会問題として盛んに取り上げられていました。
そんなときに立ち上がったのが、アムステルダム国立美術館です。
アムステルダム国立美術館が文通相手を募集

2020年3月にアムステルダム国立美術館が、高齢者や障害のある人々のために「ペンフレンド」の募集を開始したのです。ホームページから住所やメールアドレスを登録すると、美術館スタッフから手紙が届くというシステムです。面白いのは、手紙の書き手は学芸員のみならず、人事部などのバックオフィスのスタッフも担当することがあるのだそう。それぞれのスタッフが、自分のお気に入りの作品に対する想いや、それがどのように自分の人生に影響を与えたかなどを書くのです。
そして手紙を受け取った人は、それに返信してもいいし、返信しなくてもよいという自由度の高い設定になっています。
美術館スタッフから自宅に手紙が届くなんて、とても素敵ですね。
いまも続く文通

©︎Naoko Kurata
2021年9月現在、オランダは数度のロックダウンを経て今に至ります。その間にコロナワクチンの接種が進み、対コロナの規制はかなり緩和されました。美術館も、一般客に対し開放されています。高齢者の孤独も、かなり緩和されているのではないでしょうか。それでもこの文通プロジェクトは、まだ継続されています。企画スタート当初は毎週手紙が送られていたそうですが、現在は2週に1度のペースになっています。
2021年2月のオランダメディア記事によると、約300名程度がこの文通に登録しているのだそう。今の時代にこういったスローでゆるやかなつながりを持つのは、普通ではなかなか難しいかもしれません。それ故にこの「美術館スタッフとの文通」は、人々にとっては新鮮に感じられたのかもしれませんね。
何事もスピーディーな現代だからこそ、イエモネはこういったスローなコミュニケーションにも注目していきたいと思います。
[A Photo by Shutterstock.com]
[Kunst als remedie tegen eenzaamheid]
[RIJKSMUSEUM ZOEKT PENVRIENDEN]
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>>>【スローなニュース】オランダのスーパーマーケットの「愛すべき無駄」
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倉田直子
Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー
2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」
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