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POSTED BY ライター/タイニーハウス・ウォッチャー 倉田直子 掲載日: FEB 16TH, 2020.

小さな家の豊かな暮らし【21】住宅難もへっちゃら!NZのタイニーハウス

「タイニーハウス」をご存知ですか? 様々なとらえかたがある言葉ですが、だいたい20平方メートル程度の小さな家を意味します。さらに、車でけん引できるモバイルハウスであることも。いま世界中でこのタイニーハウスの愛好者や、タイニーハウス生活を夢見る人々が増えていて、「タイニーハウス・ムーブメント」を巻き起こしています。このシリーズでは、オランダでタイニーハウス生活を営む人々や、素敵なタイニーハウスをご紹介します。

「タイニーハウス・ムーブメント」とは?

NZのカップルが建てたタイニーハウス
NZのカップルが建てたタイニーハウス
(c)Camanda

タイニーハウス・ムーブメントのきっかけは、2008年に発生した世界規模の金融危機「リーマン・ショック」だと言われています。この経済危機をきっかけに、「豊かさってなんだろう」「家ってなんだろう」「本当に必要なモノは何?」と多くの人が考えるようになったのです。そこからタイニーハウス生活が注目を浴びるようになりました。必要最低限のものだけを所有し、ローンのいらない小さな家に住む。そんな「小さくても豊かな暮らし」は、他国にも伝わりました。

今回は、ニュージーランド(以下NZ)で作られたタイニーハウスの紹介です。

NZカップルが建てたタイニーハウス

アマンダさんとカムさん
アマンダさんとカムさん
(c)Camanda

2018年、とある若者たちがタイニーハウス生活を始めたということで、NZのメディアで話題になりました。それは、アマンダさんとカムさんのお2人。NZ最大都市のオークランドに住む、アーティストと地質学者のカップルです。タイニーハウスを建設するプロセスや、実際に暮らしを始める際の様子をインスタグラムに掲載したことでも人気を博しています。

アマンダさんとカムさんのタイニーハウス
アマンダさんとカムさんのタイニーハウス
(c)thisnzlife

お2人のタイニーハウスは20平方メートルで、ロフトスペースを含めると26平方メートル程度の広さ。

薪ストーブの炎にはリラックス効果も
薪ストーブの炎にはリラックス効果も
(c)Camanda

ライフラインは太陽光発電、ガス、水タンク、(発電所からの)配電の組み合わせで日々の生活を営んでいるそう。冬に家を非常に暖かくできる薪ストーブも完備。

シンプルで清潔なバスルーム
シンプルで清潔なバスルーム
(c)Camanda

二重ガラスを採用しているので、気密性は高く保たれています。そして、トイレはコンポストトイレ。

廃材を自分たちで回収してリサイクル
廃材を自分たちで回収してリサイクル
(c)Camanda

また、床にはタワ(NZ由来の樹木)のリサイクル木材使用されています。アマンダさんたち自身で、取り壊された国営住宅から床材を回収して再利用しています。家の外壁には、日本の杉材も使用しているのだとか。
2018年5月に、4か月の製作期間を経てタイニーハウス生活を始めたお2人。
一体なぜ、タイニーハウス暮らしを始めようと思ったのか尋ねてみました。

NZタイニーハウス・コミュニティとの出合い

大きな窓からの光で、室内は明るい
大きな窓からの光で、室内は明るい
(c)Camanda

アマンダさんとカムは、以前から環境に優しく、かつ環境に及ぼす影響を認識しやすい生活をしたいと考えていました。お2人はミニマリズム的なライフスタイルが好きで、モノをあまり購入せず少ない所有物せ生活することに興味と価値を感じるタイプだったのだそう。

実はNZのタイニーハウス・ムーブメントは非常に活発で、国内の各所にタイニーハウス愛好家のコミュニティが存在しています。Facebook上にも、関連グッズの売買やアイディアをシェアするためのグループが活発に情報を交換しています。

カムさんとアマンダさんもそういったコミュニティに属すようになり、やがて自分たち自身のタイニーハウスを持ちたいと考えるようになります。

NZが抱える住宅問題

タイニーハウス内のアマンダさんとカムさん
タイニーハウス内のアマンダさんとカムさん
(c)thisnzlife

お2人がタイニーハウス建築に乗り出した大きな理由の一つに、NZが抱える住宅問題があります。現在、NZは住宅危機に見舞われていて、住宅価格は非常に高額。アマンダさんに聞いたところによると、オークランドの住宅購入価格は、平均約100万NZドル(2020年1月現在約7千87万円)程度なのだとか。家を購入するための住宅ローンを銀行に依頼する際、必要な頭金は20%で、約20万NZドル。そして30年から40年かけて住宅ローンを払い続けることも珍しくないのだそう。

建築中のタイニーハウス内のお2人
建築中のタイニーハウス内のお2人
(c)Camanda

アマンダさんとカムは当時すでに交際7年、一緒に暮らしたいと考えていました。けれど、前述のような高額な住宅購入資金のあてはなく。賃貸物件で一緒に住みながら貯金することも選択肢にありましたが、自分たちにの手元に残らない出費を払い続けることも不満だったのだと教えてくれました。
その点、タイニーハウスなら50%の頭金と50%のローンという小規模な借り入れで済み、5年で完済できる計算ができたそう。

お2人の家の建築費は、だいたい10万NZドル(同約708万円)。しようと思えばもっと節約もでたそうですが、せっかくなので非常にこだわって作ったのだとか。すべてをハイグレードなもので揃え、最高の家に創り上げました。

タイニーハウスに乾杯
タイニーハウスに乾杯
(c)Camanda

タイニーハウスに住み始めてからも、「生活はあまり変わっていない」と語るアマンダさん。でも、コンポストトイレに慣れることや、太陽光をチェックしたりプロパンガスを補充したりするのは、なかなかエキサイティングなプロセスだったそう。けれど普通の家やアパートに住むよりも自由があり、自分たちの家だという実感があるそうです。

NZのアマンダさんとカムさんのタイニーハウスご紹介、いかがでしたでしょうか。普段あまり見聞きすることのないNZのタイニーハウス事情、非常に興味深かったですね。NZの住宅購入価格は若者に不利な状況が続いているようですので、アマンダさんとカムさんのようにタイニーハウス暮らしに舵をきる若者も増えるかもしれません。これからも、注目していきたいと思います。

[instagram.com/camandas_tinyhouse ]

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【連載】小さな家の豊かな暮らし〜オランダ発 タイニーハウス 〜

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倉田直子

Naoko Kurata/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間

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